草津 三國家&和牛ビストロ三國家
- 住所
- 〒377-1711
群馬県吾妻郡草津町草津386 - フロア情報
- TEL 0279-88-2134
営業時間 AM11:00 ~ PM15:00頃(昼)
PM17:30~品切れまで
定休日 火曜日
2019年10月に大規模リニューアルオープン後、さらに人気の行列店に
――群馬・草津のそば店『三國家』様は創業100年ということで濱口社長様は三代目、そして2019年10月にはメニューを一新して店舗も思い切った改築をされました。リニューアル前もこの草津の湯畑周辺では行列の絶えないそば店としてとても有名でしたが、10月のリニューアル後もお客様の行列は変わることなく、今日の昼の行列もすごいですね。
濱口昌伸『三國家』社長(以下濱口。敬称略) 去年にも増して並んでいただくようになっています。今(2019年12月初旬)1年でいちばん暇な時期ですが。
――今年の4月から10月までお休みして店舗を全面的に改築され、10月23日に新装オープンされました。今回のリニューアルで一番力を入れたのは?
濱口 そばの製麺方法を、手打ち麺機から押し出し麺機に変更したのが今回一番大きく変えたことで、メニューもだいぶ変えることになりました。それは人手が不足になりまして、以前使っていた手打ち麺機ですと30キロ、40キロを仕込むのですが、人手が不足するとこなせなくなります。麺を茹でるときも付きっ切りで何人前も茹でるので、腰への負担も大きかったのです。その点、今回のリニューアルで押し出し式麺機と全自動のゆで麺機にしたら仕込むのも茹でるのも無理なくできるようになりました。お客様がたくさんいらっしゃることで作業が忙しくても人手がそれほどかからずにできるようになって、人手不足も以前よりも問題にならずにすむようになりました。
――たしかに人手不足の問題は深刻ですね。しかし、そばの製造方法を変えるというのは思い切った改革・改造ですね。
濱口 そうですね。メニューを変えるのは不安があったのですが、うまく導入しておられた横浜・鶴見の『田中屋』さんで見学させてもらいまして。こういう風にやればいいんだなと理解できました。
10年前の売上不振がきっかけで富士工業所と出会うことに
――富士工業所とのそもそもとの出会いは?
濱口 10年くらい前ですかね。私どもの先代の社長が亡くなり、相続のこともありまして、いろいろとお店を探していまして、富士工業所さんの店舗デザインがいいなあと。
――それはおそば屋さんの店舗でいい店舗はないかと探しておられたと?
濱口 そうですね。最初はいいデザインの店舗はないかと探していました。富士工業所さんの店舗がいいデザインでいいなあと。いちばん初めは旭屋出版の「そばうどん店繁盛BOOK」第1集で見まして。当時だんだんうちの店舗が古くなって売上も下がるし出前も減るしどうにもならないときに、どうにかして繁盛したいなと思っていたら「繁盛BOOK」を目にしまして。
渡邉眞人㈱富士工業所会長(以下渡邉。敬称略) そうでしたね。あの当時はこの辺に何軒くらいあったのですか。
濱口 当時は12~13軒くらいありましたね。
渡邉 たしかに激戦区でしたね。
濱口 どこも歩いて行ける距離ですから。当時はこの同じ通りにある『柏香亭』というお店だけが繁盛していまして、あとはどんぐりの背比べのような感じで、他に行列ができているほどの店はなかったですね。
――そのときに富士工業所とどんな方向で改善しようとご相談されたのですか。
濱口 どうでしたかねぇ。
渡邉 当時どのお店もメニューは舞茸天ぷらそばを売り物していて、だいたい似たような売り方をしていましたね。それでそれとは違った切り口にしようと、少しとがった売り方といったらいいのか、他とは違いを出そうということをご提案させていただきましたね。
――その後、メニューを一新されて「板そば」中心の売り方にされたと。
濱口 はい。2.5人前のそばを盛り、それにつけ汁を別注文していただくという方式です。製麺は手打ち麺機を使いました。
――それで行列店になってきたのですね。
濱口 その板そばを2、3人で食べるのですが、「都汁」という「きざみ鴨せいろ」の汁が評判になりまして。これも横浜の『平沼田中屋』さん(注:前出『鶴見田中屋』の本店)に教えていただいたものですが。
――その後、今回のリニューアルに至ったということですね。それで今回は押し出し式の製麺機を新たに導入されたわけですが、それは先ほど少しご説明いただいたように、厨房で働く人の人数をあまりかけずにできるという狙いがあったと?
濱口 そうだったのですが、実際に開店に際して人を募集してみるとけっこう集まってきまして。
――それは良い意味で予想外なことで。
渡邉 それはリニューアルした後のことですか。
濱口 そうです。いま15人くらいいまして。
渡邉 それはまたリニューアルの新しい効果ですね。今回省人化のためのシステムを入れていただきましたからね。
濱口 リニューアルを機に2階をステーキとワインを売る「和牛ビストロ」という業態の店舗にしましたので、そこにも人が割り当てられるようになりました。まだ2階は夜の営業だけで、ランチの営業はしていませんが、近々ランチ営業もできるのではないかと思います。
渡邉 なるほど。段々とその態勢ができてきていると。
濱口 そうですね。いま夜は1階のそば店の厨房で1人が2階のステーキ担当の従業員が肉を焼いて、もう1人が2階の冷菜やドリンクを作っています。
渡邉 厨房に今回造りました1階と2階をつなぐバックヤードの階段はどうですか。
濱口 あってよかったです。料理をリフトで上げるだけでなく、人間が直接上がって確認できるのがすごくよかったですね。
渡邉 この店舗の建物も伝統のあるものでしたね。
濱口 この店舗の建物は100年以上前の伝統のあるものでして。
渡邉 その建物を今回、全面的に改築されてリニューアルされたわけですが、一大工事でしたね。設計の方は私どもの方でやらせていただいて、施工は地元の工務店の方が担当されて、しっかりやっていただきましたので、建築的にだいぶ強度も増してとても立派なお店にできたのではないかと思います。地元の工務店の方が施工されるというのは、地域に密着した部分で良い面がたくさんありますしね。ただ厨房の施工に関しては、以前からいろいろと厨房機器のご用命をいただいておりましたので、今回も富士工業所にご用命いただきました。
昼に180人、6回転する作業を3人でこなす自動調理システム
――今日のような12月前半の平日は草津の湯畑でそれほど人出が多いとは言えないように感じますが、それでも『三國家』さんだけはすごい行列ができています。いつもこのように行列ができているのですか。
濱口 そうですね。ほぼ毎日、誤差なく出ている食数が決まってきていますね。
――昼で何回転くらいするのですか。
濱口 ほぼ毎日昼で6回転くらいです。
――6回転ですか!
濱口 そうです。180人くらいですかね。
渡邉 1階の席数は?
濱口 30席です。
渡邉 そのくらいの客数をこなそうとすると、人手が揃っているという条件がなかったとしたら、現在の新しい厨房のシステムでは何人くらいいれば対応できるとお考えですか。
濱口 3人くらいですかね。
渡邉 もしも昔の、リニューアル前のさらに前、最初に出会った頃の設備、つまり全自動システムではなく従来の釜前の設備、すなわち丸釜の茹で釜があり、茹でた麺を手で上げて水で洗って冷やし、器に盛るという旧来の釜前の仕事のままだったとしたら、6回転の人数のお客様をこなすには厨房であと何人くらい必要になるとお考えですか。
濱口 あと2人は必要でしょうね。それだけでなく、現在は腰を痛めないことも大きいですね。いま釜前をやっている方はもうすぐ80歳なんですよ。12~13歳の頃からうちで働いてくれていまして。昔の奉公というのですかね。
渡邉 180人が集中する昼を3人でこなせて、2人少なくてすむというのは大きいですね。それに体を痛めないことも大事です。熱海の方にある、私どもの設備を入れているお店で、釜前で腱鞘炎で困っておられた方がいまして、それで釜前の作業を自動のものに入れ替えたら今は非常にラクだと言われています。
――『三國家』さんが釜前で今回採用されたシステムは、押し出し麺機に角形ゆで麺機を装着した方式で、押し出し麺機からそばが押し出されると角形ゆで麺機に落とされ、自動的に茹でられた後、カゴが上がり隣のシンクに移され、さらに自動的に水洗い・水切りされる。そのそばを従業員が器に盛るという流れですね。設定通りにそばが出来上がり、作業が自動的に流れていくことで作業もとてもラクになったと。
濱口 そうです。とくに今回は押し出し麺機に入れるそば生地の玉の大きさが3段階だけですので、メニューも「三國つけ汁そば」や「海老天汁そば」「きざみ鴨せいろ」などのメニューそれぞれに、そばの量を「1合」「1合半」「2合」の3種類から選ぶ形になっています。その注文に合わせて押し出し麺機にそば生地の玉を入れる方式です。以前は、手打ち麺機で一度にまとめてそばを仕込んでおき、必要な分量をまとめて茹でる方式でした。今回は3種類のそば生地の玉を仕込んでビニールにくるんで保管しておくだけです。生地を仕込むときも高速ミキサーを使ってスピーディーにできますので、朝早くからそば生地を仕込む必要もなくなりました。
――いま昼に行列ができて180人くらいのお客様が来店されているということですが、慣れてくればもっといけるということもありますか。
濱口 そうですね。あと20人くらいはいけますね。実際、土日は200人くらい来ていただいています。平日は午後2時半を過ぎるとちょっとお客様が途切れる日もあります。
――ただそれくらい高回転ですと、ちょっとお客様の客席誘導の具合で空席ができてしまうと、客数にも影響してしまうのではないですか。死に席をどう減らすかというような誘導の仕方も大事になってくるとか。
濱口 団体さんが来られるときはちょっと難しいことがありますね。一緒じゃないといやだとか言われますと少し席を空けておくことも必要になりますから。
渡邉 平均で平日180人、土日で200人となりますと、実質的には昼で7回転ということになりますね。昼の営業は何時からですか。
濱口 11時からです。リニューアル前は10時30分からでしたが、30分遅らせました。でも客数的には変わりませんでした。
渡邉 リニューアルオープンしてまだ1ヵ月半ほどでしょうが、だいたい体感的に1階のそば店の売上はどのような感じですか。前年比で何%くらい伸びているとか。
濱口 伸び率ではうまく言えませんが、前年対比の1ヵ月の売上比では50万から60万円くらい伸びているような感じでしょうか。
渡邉 それはいいですね。客単価はどのくらいですか。
濱口 だいたい1450円から1500円くらいです。
渡邉 それはだいたい狙い通りの数字ですね。以前出されていた「板そば」がなくなったことがいい方向に来ているようでよかったですね。
濱口 板そばを注文するときよりも滞店時間が短くなりました。板そばメニューは2人で2.5人前をシェアして召し上がる感覚なので、おなか一杯になって、食べた後、お茶を飲んでゆっくりと過ごされることが多かったんです。それで滞席時間が平均30~40分と長かったのですが、今回のメニューは1人ずつに変わったので、早い方だと15分くらいになりました。
渡邉 それはずいぶん早くなりましたね。昔からさっと茹でて提供し、さっと食べて出るというおそば屋さん本来の強みでもありますね。
――外で待つ方も早く入れるようになったのでは?
濱口 たしかにそう思っているんですが、それでも待つ方は30~40分並んで待ちます。寒い時期に待っていただく方にはホカロンやそば茶をお出ししたりはするのですが。
渡邉 そのような対応をしっかりしていらっしゃるわけですね。濱口社長様にとって『三國家』さんの“並ぶ魅力”とは何だとお考えですか。
濱口 やはり「きざみ鴨せいろ」のつけ汁ですね。それに尽きると思います。前に説明しましたが、リニューアル前のメニューで板そばのつけ汁の1つに「都汁」というのがありまして、それがきざみ鴨せいろのつけ汁で「都汁」として売って評判をいただいていました。今回のメニュー変更では「きざみ鴨せいろ」1合950円として販売しています。
渡邉 リニューアル後に人手が増えたというのもすごいですね。何か求人の広告を出されたのですか。
濱口 出しました。地元紙とインディードの有料版です。
渡邉 募集したのは調理場、ホールどのように?
濱口 だいたい洗い場主体ですが、ホールをやらせてみたらできたりとか、厨房には1人入れまして、あとは2階の店に必要な人とか。
渡邉 機器の方では、当社のシステムですと取扱いの方法を説明した場合に、現場的には割と早く慣れていただけるものでしょうか。
濱口 そうですね。機器を扱う段階で教えて、また扱う段階で教えてというふうに教えています。
渡邉 入った日から1日、2日あれば大丈夫でしょうか。
濱口 大丈夫ですね。説明したらすぐにできるようになります。
渡邉 それじゃあ、釜前も?
濱口 説明したらすぐできました。押し出し麺機も教えたらすぐにできるようになりました。
渡邉 そうするとご主人が調理場から出て、アイデアをお考えになったりする別の仕事をされる日も近そうですね。
濱口 そうかもしれませんね。
1階の厨房設計では1階・2階連携の効率的な作業動線を重視
――今回のリニューアルで、とくに1階の厨房を設計する際にご要望されたことは?
濱口 今回は1階がそば屋で、2階が和牛ステーキとワインを売るビストロ業態というあまり例のない店舗でして、1階の調理場を兼用させて、料理やドリンクはリフトで上げて、人間は階段で上がったり降りたりするということを考えていました。ステーキを焼くのは1階のそば店用のスチームコンベクションオーブンを使うことが前提でした。したがって、2階の調理とドリンクを作るのと、それをリフトで上げること、人間が調理場側の階段を使うこと、これらが無駄のない動線でできるようにしていただきたいということが大事なポイントでした。
――つまり1階のスチコンを使って1台2役で2業態分の料理を作り、その近くでリフトで上げていく。そしてすぐにバックヤードの階段で上がってそのステーキをチェックして提供できると。それが動きやすくできているということですね。
濱口 そうです。ですからリフトとスチコンを階段近くに設置して、2階との動線を効率よくすることです。
渡邉 普通だったらまったく真逆の業態である、そば店と和牛ビストロという本来別々の資本で出されるお店です。装備も違いますし。そういう意味ではとても効率の良い売り方ということになります。
――そば店と和牛ビストロという異なった業態が1階と2階にあるのを、いかに調理場で連携させるか、というのが今回の店舗・調理場づくりのキモということですね。
渡邉 実際、1階・2階のメニューがよく絞り込めているのでオーダーが入ってきても、それほど混乱せずにそれぞれの調理が無理なくできているのではないかと思います。お忙しくなってくるとそれもまた検討しないといけないかもしれませんが。
――お忙しくなればまた2階に専用のスチコンを設置することも検討できるでしょうしね。そもそものお話で伺いますと、この2階は以前は何かに使われていたのですか。
濱口 とくに何も使っていませんでした。
――今回のリニューアルで2階を和牛ビストロにしたと?
濱口 3年くらい前に1階の厨房にスチコンを導入しまして、そば店の調理に活用するようになっていたのですが、それだけでなくときどき和牛のメニューを試しに売っていました。とくにブランド牛としておいしい宮崎県の尾崎牛を仕入れてたまにスチコンで調理して売ってみたら、けっこう人気があったんです。
――すでに前からスチコンでステーキの試験販売を1階で始めていたんですね。
濱口 そうです。それで渡邉会長に2階の店舗の活用法についてご相談したらこのような業態を提案していただきました。最終的に宮崎県の尾崎牛と地元群馬・赤城牛をスチコンで調理して提供する和牛ビストロという店にしたわけです。
渡邉 以前に聞いた話ですが、この草津は2階のお店の活性化ができない地域だそうですね。湯畑周辺にこれだけ観光の人がいながら、2階の店舗が空いてしまうとなかなか埋まらないという街の特性があるということなんです。もともと2階は非常にいい場所なのにもったいないですよね。
――この辺では2階の店舗をうまく使えているところがないと?
濱口 逆に入っているところもあるのかもしれませんが、私の見るかぎりそんなに入っていないようですね。
渡邉 温泉地というのは割と肉料理が売れるというのは、私も熱海とかいろいろな温泉地で感じていまして。温泉地では和食を食べる機会が多いのでお肉が食べたいというお客様がけっこういらっしゃるんです。ですからちゃんとしたおいしい肉料理を出せば利用するお客様はいらっしゃると思います。きちんとしたステーキを出しているお店はそう多くはないですしね。
――「ステーキ屋」というと、鉄板焼で出されるシズル感のあるアツアツの牛肉をイメージされるお客様が多いのではないかと思いますが。
濱口 ですからステーキ屋という言い方はせずに「和牛ビストロ」と表示しています。スチコンでスチームをかけてしっとりとしたお肉の肉汁を嚙みしめながら赤ワインを味わっていただきます。ステーキとは違ってアツアツではない状態ですが、肉が少し落ち着いてきて肉汁がまわってきたところを味わっていただくというイメージです。
――「和牛ビストロ」というお名前を付けたお考えがとてもよくわかりますね。「和牛ビストロ」の売上と客単価はだいたいどのくらいですか。
濱口 まだ夜だけの営業で売上は土日で1日10万円から11万円くらいですね。売上目標としては1日15万円を見込んでいます。客単価は4200円から4300円くらいです。5000円は行きたいところなんですが、「和牛ステーキ重」100g1890円、150g2490円、200g3290円を注文されるお食事だけのお客様もけっこういますのでやや低いですね。
――2階でランチを始めるとまた売上目標なども変わってきますね。
濱口 ランチを始めたら1日の売上目標は20万円になります。
そば店でのスチコンの活用の仕方は
――そば店での仕込みでスチコンはどのように活用されているのですか。
濱口 まず天ぷら用の野菜をスチームボイルしています。
――天ぷらに揚げる前の下処理として加熱調理しているということですか。
濱口 そうです。それと鴨をロースにしたり、鶏肉を低温調理したりしています。あとは温泉玉子とかですね。リニューアル前のお店のときは鶏のから揚げや焼き魚もやっていました。それに牛肉調理ですね。
――その牛肉メニューが和牛ビストロのメニューにつながるわけですね。それらの牛肉メニューはどのようにそば店のお客様にお知らせしていたのですか。
濱口 メニューPOPを店内に貼り出して知らせていました。
――先ほどのスチコンで作っている温泉玉子ですが、リニューアル後の新メニューとして「湯畑温泉たぬきそば」900円を始められ、その上に温泉玉子をトッピングされています。普通の「たぬきそば」とはネーミング的にもだいぶ付加価値が違いますね。温かいおそばとともに「冷やし湯畑温泉たぬきそば」900円もあります。
濱口 このメニューも渡邉会長からご提案いただきました。よく売れています。つけ汁そばメニューとして基本の「つけ汁そば」1合700円、「きざみ鴨せいろ」1合950円、「海老天汁そば」1合950円、「こがし葱肉汁そば」800円の4種類があるのですが、「こがし葱肉汁そば」も今回提案していただきましてよく売れています。渡邉会長からご提案いただいたメニューはほとんどがよく出ていますね。
――「こがし葱」というのがおいしそうなネーミングですね。
渡邉 今回、メニューはだいぶ変えられましたが、数としては絞られたままですね。
濱口 そのおかげで回転が速いのかもしれません。
渡邉 ご飯ものは有頭エビの天ぷらや温玉天、イカ天、野菜天などを盛った「三國天丼」1200円と、小海老の天ぷらやバラ野菜天、牛肉天、温玉天などを盛った「バラ天丼」1000円の2種類だけに絞っていますが、売れ行きはどうですか。
濱口 「三國天丼」が多いときと「バラ天丼」が多いときがあります。交互ですね。
渡邉 200円違いだから悩ましいのでしょうね。
濱口 平日は「バラ天丼」が多いようですね。
渡邉 「バラ天丼」というネーミングはその日にある材料の天丼ということで、説明書きには「牛肉天」と記載していますが、豚肉天や鶏肉天のときもあるというメニューです。このメニューも私どもからご提案させていただいたのにお聞きするのは妙なことかもしれませんが、天丼に肉天が入った感じとしては、お客様の抵抗感はなかったですか、それともむしろ喜ばれるとか、あまりわからないとか。
濱口 肉天についてはあまりわからないですからね。わかっても「それでもいいや」と言われることが多いです。たまたま牛肉天が入っていたら「そのときは当たりだね」とおっしゃる方もいますね。
渡邉 そうですか。まさに「バラ」ですもんね。ところでお酒の出具合はいかがですか。
濱口 日本酒が多いですね。ビールも出るんですけど、やはり日本酒ですね。
渡邉 10月のリニューアルオープンのときはスタートからビールがよく出ていましたね。
濱口 12月になってやはり日本酒の方が多くなってきています。
渡邉 メニューブックの中で「おすすめ逸品」の2品「小海老天盛り」380円と「ニシン酢漬け」380円の出具合はいかがですか。
濱口 「小海老天盛り」はちょっと出過ぎですね。(笑)
渡邉 この2品は、私がコンサルタントとしてメニューをご提案したときに、メニューブックの1ページを使ってこの2品だけの写真を大きく掲載して、しかも380円という値づけをしていまして。「小海老天盛り」は海老天を5個も盛っていましてね。
――とっても注文しやすい値づけですね。
渡邉 これはサイドメニューとして客単価を380円上げたいということを意図したものです。
――これとビールを注文して、それからそばを注文するとか天丼を注文するわけですね。
渡邉 まさにそのつもりでご提案しました。
濱口 日本酒を飲む方は「ニシン酢漬け」を必ず頼まれます。
渡邉 ニシンについては濱口社長ご自身が仕入れで尽力され、苦労されました。おいしいですよね。
「富士工業所グループの強みは何でも相談にのってもらえること」(濱口社長)
――濱口社長からご覧になって、富士工業所グループの強みというのはどの辺にあるとお考えですか。
濱口 富士工業所さんですと機械のことやメニューのこと、全部一緒じゃないですか。すべてが収まるのがいいですね。普通は経営コンサルタントの方にお願いすると、メニュー面で相談はできても、店舗設計や厨房機器などは別々の会社にお願いすることになったりしますが、渡邉会長のところにお願いすれば、機械のこととかメニューのこととか、プランニングとか全部相談できるのがいいですよね。もし最初の案がダメであっても次の代案をすぐに出してもらえますしね。
渡邉 私ども富士工業所グループのニチメンデザインがありまして、そこで私がコンサルテーションとプロデュースの仕事をやる部門があるものですから、今回その入口のところから担当させていただき、前のお店のときからの長いお付き合いですからね。信頼関係もあって、そのベースの中でいろいろとご相談いただきました。最近は「きざみ鴨せいろ」のギフト商品の方までやらせていただいておりまして。
――とくに厨房設備の面での富士工業所の“強み”はどのようなところだと見ておられますか。
濱口 一番は腰など体に負担がないシステムですね。それと覚えてしまえば誰でもできる機器が揃っていることでしょう。ちょっとした技術的なことは経験が必要なこともあるでしょうけど、ある程度のことは誰でもできるようになっていることですね。
――これから働き方改革の流れの中で、残業時間などさまざまな働き方の制限ができてくるわけですが、そういう時代には強い味方になってもらえるということですね。
濱口 まさにそうですね。
渡邉 人手不足なのはこの草津町でも同じように切迫した問題だと前から言われていますからね。でも別の効果として、店舗を改築したら働く人が以前よりも集まってきたというのはいいことですね。
濱口 人手不足のときにその点は助かりました。
「濱口社長は誰よりも研究熱心で将来が楽しみ」(渡邉会長)
――渡邉会長からご覧になって、『三國家』の濱口社長様の強みはどのようなところにあると感じられますか。
渡邉 私の知る限りの飲食店のオーナーさんの中では、本当に研究熱心で勉強熱心なところが強みですね。勉強や研究のための時間と費用は全然無駄と思われていないし、そういうことに関してはいつでも最優先にするという価値観を持っていらっしゃる方だと思います。ですから研究されたことを吸収されることが早く、いままでのキャリアと自信が積み上がっていくと、良い結果も出てくるのが早いので、また次のことが思い浮かんできたときに、決してこれでよしとせずに、満足しないというか、もうこれでいいんだということがない。そういう伸びしろのある経営者の方とお見受けしますね。今もそうですし、おそらくこれからも先々ね、次の代の方も成長されていらっしゃるようですし、本当に楽しみなお店だと思いますね。おそらくこのお店だけにとどまらずに、いずれ自然発生的に成長されることは間違いないでしょう。
――1階でそば店を経営していたときに厨房でスチコンを導入されたわけですが、そのときにすぐに和牛メニューの商品化を思いつき、高品質の和牛について仕入れ先とか、どれを使うか、たぶんいろいろと勉強というか研究されたんだと思いますけど。その研究が2階のスチコンを活用した「和牛ビストロ」の出店にすぐにつながったわけですね。
濱口 思い立ったらすぐにやらないと忘れちゃうんですよ。いろいろなところで「それをこうしてみて」などと私が発言することもよくあるんですけど、作業中の業者さんには「今言わないで」とすごく嫌がられたりするんですが。(笑)
――お忙しいお店ですから、業者さんやまわりの方も目の前の作業をしっかりやらなければという気持ちがあるでしょうからね。
濱口 思いついたらすぐに動いちゃうし、言っちゃうんです。
渡邉 いいものはいい、というサジェスチョンと決断力がすごく早いんですね。あ、これはといったときの決定はすごく早い。濱口社長とはいつも仕事でメールなどをやりとりさせていただいていますが、これはいいとなったら間髪なくご回答いただいており、とても仕事がスムーズに進めることができて助かっています。本当に今後がとても楽しみです。
――今日はご協力大変ありがとうございました。